――どういう気持ちなのか、本当に心があるかなんて、わかんないよ。
その言葉が、頭の中で渦を巻く。
神崎奇跡は死んだ。
私は、その事実に対してどういう気持ちなのだろうか。心、という当たり前にあるはずの所有物を亡くしてしまったような居心地の悪さを感じながら、黙々と食事をとった。
ヒメムラサキは、食事をとらない。
理由は明白だ。彼女はヒトではなく、ただのシステムなのだから。
ヒメムラサキは言う。
『良かった、はるちゃんの好物だよね。豚の生姜焼き』
はるちゃん、と。
神崎奇跡がかつて私を呼んでいた名前で、ヒメムラサキは私を呼ぶ。
豚の生姜焼きは、美味しかった。
悔しいくらいに。