帰り着いた部屋。

 電源の切れてしまった端末を、コンセントにつなぐ。

 すっかり習慣になってしまった動作。

 端末に浮かび上がる充電中マーク。

 端末が再起動しても、もうそこにはヒメムラサキはいないのだ。

「……ごはん、作らなくちゃ」

 何かをしていないと、どうにかなってしまうと思った。

 告げられたことを思い出す。

 神崎奇跡は、私に恋していた。

 誰もが彼女を神様とあがめる中で、たったひとりだけ彼女をただの「姉」として扱った私に特別な感情を抱いていた。

 それは愛欲を多分に含んだもので、実の妹に向けるべき気持ちではなかった。

 あの神様みたいな神崎奇跡は、その気持ちの行き場所も遺棄場所もついに見つけられないまま、風にあおられてあっけなく死んだ。

 私も、神崎奇跡を――愛していた。

 生まれたときから近くにいて、誰よりも完璧で、美しくて、でも、いつだって私に寄り添ってくれる「姉」である神崎奇跡を愛していた。