「あれ、ここは……」
目を開けると、夕暮れの境内に佇んでいた。
寂れた社。夕焼け色の鳥居。
ああ、ここは山之上神社だ。
なぜだかそう直感した。
ならば向かうのはあの場所。
奇跡と私が夕暮れ時に語らっていた、街並みを見下ろす崖。
そこには、少女が立っていた。
「……ヒメムラサキ?」
「はるちゃん」
いつもの、少しだけ機械がかっているような声ではない。
クリアな音声でヒメムラサキは話す。
その声で、ここは現実世界ではないのだと、私は理解した。
「ここは?」
「ヒメの仮想神通力で、はるちゃんの意識に働きかけてるの」
「え、そんなことできるの?」
「神通力の限定開放って感じかな。神崎奇跡が残した三つ目の大契約はね、『神崎奇跡が死亡してしまった場合』について発動するものだった」
整然と。
ヒメムラサキは告げる。
「神崎奇跡が死亡した場合、T.S.U.K.U.M.O.システム・ヒメムラサキを神崎はるかが相続すること。そして……、『神崎はるかが神崎奇跡のことを、好きだと言った場合に限り』、この術式を開放すること……そういうふうにできてたの」
「えっ」
「普段からそのへんのT.S.U.K.U.M.O.がこんな能力発揮してたら怖いでしょ?」
「……神崎奇跡を、好きだと言った場合に限りか」
そんなことのために、こんなに大がかりな仕掛けを。
実に奇跡らしい。
「それで、私は何のためにここに呼ばれたの?」
記憶にあるままの山之上神社。
記憶通りの夕暮れ空にちょっとセンチメンタルな気分になってしまう。
「それはね、奇跡からの伝言を……ヒメムラサキという恋文をはるちゃんに伝えるためです」
「……恋文」
にこりと。
あの、神様みたいな微笑みを浮かべてヒメムラサキは言った。
幼いころの神崎奇跡そっくりの顔で、よどみなく、長い長い恋文をそらんじはじめた。
目を開けると、夕暮れの境内に佇んでいた。
寂れた社。夕焼け色の鳥居。
ああ、ここは山之上神社だ。
なぜだかそう直感した。
ならば向かうのはあの場所。
奇跡と私が夕暮れ時に語らっていた、街並みを見下ろす崖。
そこには、少女が立っていた。
「……ヒメムラサキ?」
「はるちゃん」
いつもの、少しだけ機械がかっているような声ではない。
クリアな音声でヒメムラサキは話す。
その声で、ここは現実世界ではないのだと、私は理解した。
「ここは?」
「ヒメの仮想神通力で、はるちゃんの意識に働きかけてるの」
「え、そんなことできるの?」
「神通力の限定開放って感じかな。神崎奇跡が残した三つ目の大契約はね、『神崎奇跡が死亡してしまった場合』について発動するものだった」
整然と。
ヒメムラサキは告げる。
「神崎奇跡が死亡した場合、T.S.U.K.U.M.O.システム・ヒメムラサキを神崎はるかが相続すること。そして……、『神崎はるかが神崎奇跡のことを、好きだと言った場合に限り』、この術式を開放すること……そういうふうにできてたの」
「えっ」
「普段からそのへんのT.S.U.K.U.M.O.がこんな能力発揮してたら怖いでしょ?」
「……神崎奇跡を、好きだと言った場合に限りか」
そんなことのために、こんなに大がかりな仕掛けを。
実に奇跡らしい。
「それで、私は何のためにここに呼ばれたの?」
記憶にあるままの山之上神社。
記憶通りの夕暮れ空にちょっとセンチメンタルな気分になってしまう。
「それはね、奇跡からの伝言を……ヒメムラサキという恋文をはるちゃんに伝えるためです」
「……恋文」
にこりと。
あの、神様みたいな微笑みを浮かべてヒメムラサキは言った。
幼いころの神崎奇跡そっくりの顔で、よどみなく、長い長い恋文をそらんじはじめた。