五月の麗わしき朝を引き裂く、叫び声があった。

『はるちゃん、起きろお~~~!!!」

 仮想神格システムT.S.U.K.U.M.O、個体名【ヒメムラサキ】。

 急死した姉から相続したバーチャルアシスタントである。

 ヒメムラサキはいま、すやすやと眠るご主人である私に跨って拳を振り下ろしている。

「痛い痛い、痛いよぉ?」

『はるちゃんが起きるまでっ! ヒメはっ! 殴るのをっ! やめないっ!!』

「やめてぇえぇっ!」

 布団にくるまる私を、そこそこの強度の拳でぶん殴り続けている美少女型人工付喪神は絹みたいな黒髪を三つ編みにしていた。

 ダメ大学生である私は、朝に弱い。

 朝に弱い私を殴るヒメムラサキのパンチ力は、強い。