才谷を取り囲んでいるのであろう人だかりを眺める私に、ヒメムラサキが声をかける。

『はるちゃん、いいの?』

「うん、いいんだ。帰ろう」

 それでも人だかりを気にするヒメムラサキの手を取って、駅の方へとダラダラ歩く。

 じきに才谷を保護するために、パトカーなり救急車なりがくるだろう。

 神崎奇跡の最期の足跡を追いかける私たちの旅は、これで終わる。



 私は。


 その旅路の終わりに、なぜだか、急に確信した。



 まるで天啓――神様から、そっと耳打ちされたかのように、確信したのだ。






 神崎奇跡は、絶対に。



 絶対に、自殺なんかしていない。