私によく似たT.S.U.K.U.M.O.の顕現体を、神崎奇跡が溺愛していた?

 ヒメムラサキの、あの奇妙なヒント。

 なにかが、つながりそうな気がする。

「でも、ヒメムラサキはあなたのことを知らなかった」

「そう。まあ、奇跡さんにとっては私はそれくらい取るに足らない存在だったのかもしれないね……あるいは」

 もったいつけて、才谷は言う。

「あるいは、私のことを誰かに知られたくなかったか」

「誰か、って?」

「それはもう、あなたはヒントをもらってるんじゃない?」

 ヒント。

 また、ヒントだ。

「もう、ほとんど時間が残ってないね」

 ふふふ、と愉快そうに才谷は笑う。私は額に脂汗が浮かぶのを感じながら声を絞り出す。

「ふたつ、あるんですよね。話したかったこと」

「ええ。でも、はるかちゃんにとってはあまり気分は良くない話だね」

 スマホで時間を確認する。あと、三分。

「私、あれから辿れるツテは全部辿って奇跡さんの生前のことを探したの」

 平坦な声で、才谷は言う。

 なんだか怖い、と私は思う。

 多分、今からする話は私にとってだけではなく才谷にとっても気分のいい話ではないのだと思う。

「結論から話そうか。奇跡さんのことをね、恋人だと思っていたのは私だけじゃなかった」