私は、目の前の電脳つくも神に真実を告げる。

「……神崎奇跡は、死にました」

 その、瞬間である。
 バタン!
 という大きな音とともに、ヒメムラサキはテーブルの上に倒れこんだ。

「ひゃあっ!?」

『う、嘘だよっ。奇跡が、奇跡が死んじゃうなんて!! 四つの大契約は、どうするのさぁあぁっ!』

「大丈夫!? って、大契約? なにっ!?」

 可憐な少女の姿をした付喪神を、混乱しつつも慌てて助け起こす。
 おかっぱ髪からは、ふわりと花の匂いがした。
 そしてそのフローラルな香りからは想像できない暴れっぷりを見せつけるのは、電脳少女付喪神。

『触らないで、ほっといてよ!』

「痛い痛い! 引っ掻かないでよ~。ちょっ、ああ、もう!」

 姉の死にショックをうけたヒメムラサキが寝込んでしまうのを、必死で宥めすかす。しくしく泣いてぐずるヒメムラサキは、なんだか嫌に感情豊かで、嫌に人間くさい。

 ショップ店員の完璧なスマイルと完璧な佇まいを思い出す。

 あれが、人間のバーチャルサポーターとして一斉を風靡したT.S.U.K.U.M.Oシステムではないのか。

 こんなの、思っていたのとだいぶ違う。


「……どうして私がこんな目に!」



 ――それが、姉が長年手放さなかった仮想神格T.S.U.K.U.M.O.システム【ヒメムラサキ】を私が相続した第一日目の叫びだった。