神崎奇跡は殺された、と。

 そう語った女。

 神崎奇跡は、自分への思いに殺されたのだとうそぶく傲慢。

 奇跡のパートナーであるヒメムラサキすら知らないくせに、ヒメムラサキにすら認知されていないくせに、自分を恋人だったと言ってやまない女。

『ねえ、はるちゃん。その人ってだあれ? この間も会ったけど』

 歌うように言うヒメムラサキを背後に守るようにしながら、才谷をにらみつける。才谷は、長い爪が鮮やかに光る指でヒメムラサキに指をさす。

「……もう一度聞くけどさ、そいつ」

「そいつ、じゃないです。ヒメムラサキです」

「ん。ヒメムラサキは……奇跡さんのT.S.U.K.U.M.O.なんだよね?」

『いまは、はるちゃんがご主人だよ』

 ヒメムラサキの言葉に、才谷は妙な顔をする。

「……ねえ、はるかさん。よかったら少し話さない?」

「話すって、何をですか」

「あなたも奇跡さんのことで、ここまで旅行しに来たんでしょう。この場所で遭遇するなんて、それこそ奇跡だよ。せっかくだから、すこし落ち着いて話したい。この間は少し取り乱してしまったから」

「……」

「なんなら、あそこで」

 あそこ、と才谷がさした先には展望台があった。

 東尋坊タワーである。