昼を過ぎれば、カンカン照り。


 福井駅を目指して歩けば、くらっとするくらいの熱気がアスファルトから立ち上る。

 冗談じゃあない。

『……前に話した越前そば、って覚えてる?』

「あっ? え、」

 突然切り出されたセリフにまごついてしまう。

「覚えてるよっ、福井名物でしょう!」

『あれね、キンキンに冷やしたお蕎麦に大根おろしと鰹節をたっぷりかけてツルっとさっぱりいただくおそばなんだよ』

「キンキンに冷やして……、さっぱり……」


 今にも沸騰してしまいそうな脳みそに、その言葉はクリティカルヒットした。

 なぜ、今、その話をする。

 こんなにも暑さに参っているのに。

 食べたくなっちゃうじゃん。

『はるちゃん、越前そば。食べたい?』

「めっちゃ食べたい!」

『検索結果。あと五〇メートル先、右側に人気店があるよー』

「うわああぁっ! ヒメムラサキ、だいすき!」

 ナイスなアシストぶりに思わず声があがった。

『っ、』

 ヒメムラサキの顔が、真っ赤になっているのはカンカン照りのせいだろうか。

『ヒメも好きだよ、はるちゃん。………きのうは、ごめん』

 もにょ、と言う声を聞いた瞬間に私の頬も燃えた。

「たっ、楽しみだなぁ越前そば!」

 アハハ、と私は笑う。から笑いだった。