そうして、あくる日。

 あえて昨晩のことに触れない気まずい沈黙が続いた。


 午前中に訪れた養浩館庭園は福井駅からすぐ近くということもあり、ヒメムラサキも顕現体のままでいっしょに移動した。


 午前中の夏の日差しは気持ちがよかった。

 養浩館庭園は広々とした日本庭園と大きな池、そのほとりに建つ邸宅が混然一体となっていた。

 池の水面に夏の日差しにきらめいて、いつまででも眺めていられる気がした。
 池をのぞき込めば、まるまる太った錦鯉がたくさん寄ってきてパクパクと口を開けて餌をねだってきた。

 その生々しい動きに、なぜだか隣に立っているヒメムラサキを意識してしまって、また勝手に気まずくなった。