まるで、アラビアンナイトみたいだと思った。



 一晩をともにした女性をみんな殺してしまうという王様。

 彼に殺されないように、続きが気になるお話を毎晩毎晩つむぎ続けたシェヘラザード。


 そんなふうに、夜が来れば私とヒメムラサキは語り合う。私が眠りに落ちるまで。

 コンビニで買った小さなボトルのシャンプーで洗った髪は、昨晩みたいに軋んではいない。

 さすがに旅先で新しくドライヤーを買うことはできないので、そよ風未満を吐き出すドライヤーが頑張ってくれることになった。

 こうぉこうぉ、と珍妙な音を立てるドライヤーを、ヒメムラサキは器用に操る。

 部屋にテレビがあることに気づいたので、だらだらと深夜のニュースを眺めた。

 そういえば、地上波の放送なんて見るのは久しぶりだった。

 自分の部屋にはテレビだってない。