ホテルに大きな荷物は預けて、ナップザックで身軽な装備。

 抜けるような青空に、焼けるアスファルトの匂い。

 夏だ。

 今まで一度も訪れたことのない福井県だけれど、夏はやっぱり夏だった。

『初日。奇跡は恐竜博物館で一日過ごしてたみたい』

「一日!?」

『うん、一日』

 奇跡はそんなに恐竜が好きだったのだろうか……。

『福井県立恐竜博物館は、世界三大恐竜博物館のひとつって言われているくらいのグレートなミュージアムだからねぇ?』

「えっ、世界。日本じゃなくて?」

 そうだよ、とヒメムラサキ。

『うん、世界だよ。カナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館、中国四川省にある自貢恐竜博物館と、福井の福井県立恐竜博物館が世界三大恐竜博物館と呼ばれてるんだって。ちなみに、勝山市全域が日本ジオパークに登録されてる』


 ヒメムラサキがクラウドに接続して得た知識をとうとうと語る。

 すごいじゃん、福井県立恐竜博物館。

「もしかして、意外と有名?」

『その道では、って感じなのかな。少なくとも、ダイナソー小林とバトルするキッズたちは絶対に知っているだろうね』

「え、ダイナソー……何?」

 小林さんは有名な恐竜研究者だとヒメムラサキは教えてくれた。

 そして、彼女が私が不在のあいだずっと『夏休み子ども電話相談室』のバックナンバーを聴いていることも教えてくれた。

 何、その趣味。

 えちぜん鉄道は進む。