よちよち、とかそういう擬音がぴったりの歩みだったと思う。

『おねえちゃん』

 神崎奇跡は店の片隅の椅子に腰かけて、ぷらぷらと足を揺らしていた。

 その姿を見つけて、私はよたよたと駆け寄った。

 当時、神様として羽化する前の幼い女の子ではあったけれど、十分に美しかった奇跡。

 それを見て、デパートを行きかう人々は何かの撮影かしらなんて囁きあっていて、それが妙に誇らしかったのを覚えている。

『おねえちゃん、らんどせる買うの』

『ええ、うん。そう。ランドセルを買ってもらうのね』

 奇跡はにこりとほほ笑んだ。

 両親が色々と説明を受けているのを遠目に見つつ、奇跡は私に色々な話をしてくれた。

 それは、もうすっかり字が読めるようになっていた彼女が幼稚園で読んだ面白い絵本のお話であったり、年長さんの遠足で行ったプラネタリウムの話だったりした。

 奇跡がぽつぽつと語る星と神話の物語はとても魅力的だった。

 小さな手で、もっと小さな私の背中を撫でてくれた。

 ……嬉しかった。

 私のお姉ちゃんは、世界でいちばん優しかった。

 穏やかな時間。

 それが、記憶にある一番古い神崎奇跡の姿。

 あの頃、私は奇跡のことを――