街はクリスマスムードで、きらきらと輝くデパートに心が躍ったのを覚えている。

 次の春に小学校入学を控えていた奇跡のためにランドセルを買いに来たのだが、まず係の店員さんに驚かれた。

 どうやら、ランドセルのトップシーズはだいたい夏から秋なのだという。

 早い場合には一年前の春先に予約を済ませているのだそうだ。

 両親はそういった情報にあまりにもうとく、おっとりとしていた。

 店員の言うことには、いまから購入して四月の入学までに納品が可能なランドセルというのはデザインが非常に限られている。

 デザインが凝っていたり飾り刺繍がたくさんあしらわれたりしているものは、ほとんどが予約制での販売なのだという。

 私たちは、話の内容はよくわからないながらに、両親がひどく焦っているのは感じていた。

 可愛い長女にランドセルを買ってあげたい――という当たり前の気持ちを持ち合わせていたいたけれど。

 両親は、世の中のあれこれをそつなくこなすには少々迂闊すぎた。

 どうにかならないのか。
 なにか良い手はないものか。

 そんなことを店員に詰め寄る両親に、店内はおかしな雰囲気になった。

 幼い私は、それがひどく恥ずかしいことのように思えて所在ない気持ちで店内を歩いた。