『……せっかくだから、奇跡の話でもする?』

 しばらくの沈黙が流れたあと、ヒメムラサキがのんびりとした口調で提案してきた。

「奇跡の話、か」

『うん。奇跡を追っかけて、こんなところまで来たんだからさ。せっかくなら、奇跡のことを話題に選ぶのはいいと思うんだ』

「一理あるね。私は、奇跡のことは嫌いだけど……本当にいろんな人から好かれたり崇拝されたりしてた人だったよ」

『じゃんけんして、負けた方が買った方の質問に答えるっていうのはどう?』

 ドライヤーを握っていない方の手でピースサイン……あるいはチョキを出してヒメムラサキが笑う。

「いいね、受けて立つよ」

 私は、ガッツポーズもといグーを掲げて戦意を示す。

 じゃーんけーん――