こぉうこぉう、という独特の音を立てるドライヤー。

 その温風とともに、少女の細い指での手櫛がどんどん髪を乾かしてくれる。

 なんだか、頭を撫でられているような心地よさにうっとりとしてしまう。
 ヒメムラサキの手は、とても温かくて気持ちがいい。

 壁に埋め込まれた鏡に、私の髪を真剣な表情で乾かしているヒメムラサキが映っている。

 その甲斐甲斐しい手つきは空しく、少しずつしか髪の水分は飛んでいかない。

 ほぼ初めての旅行だけれど、ひとつ私は教訓を得た。

 ホテルのホームページに『アメニティ、ドライヤー完備』と書いてあったとしても。

 快適に過ごしたいのなら持参すべし……だ。