艶やかな黒髪のおかっぱ頭がひょいと顔を出して、こてんと首を傾げた。
『どうしたの、はるちゃん。はやく寝ないと明日起きられないよ?』
「あ、うん!」
『っていうか! 髪の毛びちょびちょじゃん』
「髪? え、あっ」
タオルでおざなりに拭いただけの髪から水分が染み出して、てろてろのパジャマの肩口の色を変えていた。
『冷たいでしょ。風邪ひいちゃうよ!』
「そうだね。えっと、ドライヤーは」
『これじゃない? なんか、古いねぇ』
「安い宿だから仕方ないよ……って、あれっ」
ベッドサイドにあったコンセントを使ってドライヤーをつける。
しかし、その風があまりにも弱いことに驚く。
何度も確認したけれど、ツマミは『ターボ』になっている。
しかし、噴出口から出てくるのはそよ風でももうちょっと風速あるんじゃないかレベルのよわよわの温風だ。