ヒメムラサキから香る花の香りに、昂っている神経が少しだけ落ち着くような気がする。

『はるちゃん、ご飯は?』

「うん、うーん……明日にするよ」

『えぇ~!』

「今から外食は、ちょっと無理かも」

『キッチンがあれば、ヒメが作ってあげるのに』

「うん、いつもありがとうね」

 思えば、ヒメムラサキと出会ってから本当に健康的になったものだ。

 ご飯を作って待っていてくれる人がいる、というのは存外に嬉しいのだと痛感した。

『せめてお風呂は?』

「うん、もうちょっとしたらぁ」

『そう言ってると寝落ちちゃうよ~、疲れが取れないんだからっ』

「なんかコジュートみたいだねぇ」

『ひどい。ヒメは小姑じゃないよっ?? どちらかっていうと、うんと、そうだね。恋人だよ!』

「……えっ?」

 恋人。

 その言葉に、なんとなく、というか、ものすごく照れてしまった。