「ご面倒をおかけいたします」
痛そうにしている私に、ぺこりと店員さんが頭を下げる。
「いえ、これがないとT.S.U.K.U.M.O.って動かないんですよね」
「そうなんです。お客様、T.S.U.K.U.M.O.のご利用は初めてですよね」
もちろん、イエス。
個人の用のT.S.U.K.U.M.O.なんてほとんど普及していない。
オーバースペックというやつだ。
個人が核シェルターを持っているくらいの普及率なのではないかと思う。
「あ、ここと、あとここに血判をお願いします」
スタッフさんに言われるがままに、A4判の呪符にペタリ、ペタリ、と血判を捺していく。
呪符はそれらしく筆で書かれたように見えるが、すべてプログラムによって自動生成されたものらしい。
専用のソフトを使い、国家資格である陰陽技師によって作成されるそうだ。
呪術にもテクノロジーがある、というのは少し面白いように思う。
どういった理屈になっているのかはわからないものではあるけれど、思えば目の前の携帯電話自体「使い方」は分かるけれども「どうして動くのか」なんてわからない。
意外と世の中、そんなものなのだと思う。