そういえば、奇跡は恐竜が好きだった。

 あれはたしか、私が小学1年生、奇跡が小学4年生のことだ。

 夏休みの特別番組を、奇跡は熱心に視聴していた。

 可憐な少女である神崎奇跡がそれを好んでいるのが不思議だった。

 私にとって恐竜というのは、男子が夢中になるものだったのだ。

 あと恐竜がいる世界は迂闊に公衆トイレに入ると頭上からパクリと食べられてしまう。

 シンプルに怖い。

 フルCGで画面内をのしのしと歩く恐竜をうっとりとながめている奇跡に私はなんとはなしに聞いてみた。

 一体、恐竜の何がそんなにいいのかと。