しまった。

 個人用のT.S.U.K.U.M.O.というのは非常に高価で、そこまで普及はしていない。

 企業の窓口用だとか。
 介護用だとか。
 そう言った用途に限られる。

 普通のスマホにインストールできる機械学習系のバーチャルアシスタントというのは、今のような自然なやりとりはできないものだ。

 つまり、いまの私の状況というのは、はた目から見ると。

 ――とても軽快な独り言を呟いている人、である。

 ああ、しまった。

『旅の恥はナマステだよ~』

「それを言うならかき捨て、でしょ。っていうかナニコレ」

『なんかほら、旅っぽいでしょ。機械の相棒とのこういうやりとり』

 くすくす、と実に愉快そうにヒメムラサキは笑う。

 ――意味が分からないけれど。

「機械、とか言わないでよ」

 私は小さく呟いた。