『ふふふ~、朝から満足感!』

 切符代節約のために、顕現を解除して端末の液晶の中にいるヒメムラサキがはしゃぐ。

 私の装備はキャリーケースとリュック。

 いかにも旅行者である。

 旅気分に浮かれて、私は小さく噴き出した。

「ヒメムラサキ、朝からご機嫌だね」

『そりゃあそうだよ、だってさ旅行に合わせて冷蔵庫の中からっぽにしたんだよ!』

「それって、すごいことなの」

『すごいもん! だって、今朝の朝ご飯まで美味しかったでしょう?』

「うん、いつも通りとっても美味しゅうございましたよ」

『ヒメ、そこまで計算して冷蔵庫の食材使ってたんだよ』

「そ、それはすごい」

『しかもね、リュックのなかに軽食まで入れてありますっ』

「ええっ、いつのまに」

『はるちゃん、ヒメに何か言うことなあい?』

「ありがとうございます!」

『よろしいっ!』

 電車に揺られながらそんなやりとりをしていると、周囲から視線を集めていることに気が付く。