札束とまではいかないけれど、まとまった現金はやっぱりちょっとテンションが上がるなと思った。

『はるちゃんは、洋服は新しくしないの?』

「え、しないよ。旅行なんて着慣れたものがいいんだって」

『ふうん。奇跡はね、旅行の前にたくさん洋服買ってたよ』

「へえ?」

『旅行なんていうのはね、わくわくするのが一番なの……って言ってた』

 こんなところまで、何から何まで、私と正反対だ。

 奇跡は特別で、私は普通。

 誰に聞いても、そう言うだろう。

「神崎奇跡は殺された……か」

『どうしたの、はるちゃん』

「ううん、でもなんだかね」

 たぶん、こんなことは言ってはいけないし。

 不謹慎だと怒られたりするかもしれない。

 でも、自分がこんな気持ちになっていることに驚いていた。

「なんだか私、いますっごいワクワクしてるかもしれない」

 その言葉にヒメムラサキはちょっとだけ驚いた顔をして、そしてニンマリと笑って親指を立てた。