「ヒメムラサキ、クレジット情報を削除して」
『えへへ☆ ――クレジット情報の削除を確認しました』
「よし」
半年も一緒に暮らすうちに、ヒメムラサキとはすっかり息があってきた。
生まれたときにはどこか特別な姉がいた私にとってそれは得難い体験だった。
どこにでもいる、いたって普通の、喜怒哀楽がくっきりしている、なんとなくおちゃらけた女の子……そんな振る舞いをするヒメムラサキ。
はっきり言ってしまえば私にとって、とても好ましいものだった。
神崎奇跡の遺産、仮想神格T.S.U.K.U.M.O.システムとして端末を受け取ったときには少しも想像できなかったことだった。
まるで、そう、自分の分身ができたような気分なのだ。
「バイトも二週間お休み取ってきたし、貯金も下ろしてきた」
取り出した銀行の封筒は結構に分厚くて、きっちり二十万円がはいっている。
これが、今回の神崎奇跡の死の真相を探る旅の軍資金である。生まれて初めてこんなにまとまった現金を手にした。