全身が酷く冷たくて、鈍く痛む。

喉が痛い。


「ごほっ、ごほっ」
「弥生……おかえり」
「晶……」


気がついたら、あたしは焼け焦げたゼロポイントを臨む小さな東屋の下にいた。

晶の、膝で目が覚めた。

あたしは向こうの時代でふた晩を過ごしたはず。
その間ずっと、ここにいてくれたってこと?


「ずっと、そこにいてくれたの…?」
「うん。もっと西まで移動しようか迷ったけど、ここにいた方がいいような気がしたんだ」
「晶……」

「会えたんだよな?」
「うん…だけど、あたしのせいで、昇さん…」
「俺はここにいるよ」


晶が、あたしを好きだと言ってくれたのは驚いたけど嬉しい。
だけど、あたしが好きなのは晶じゃなくて昇さんなんだよ…。


「ゴメン晶。あたしの中で昇さんは昇さんで、晶は幼なじみの晶なんだよ。だから、すぐにはその…、晶を昇さんとして見れないよ」

「いいよそれで。俺も今は晶だし。これから晶のいい所をたくさん知って好きになってくれた方が嬉しいから。ね」

「好…っ、アンタ、そんなことサラっと言うタイプだった?恥ずかしいから!」

「ははは、75年も待ったんだ。待つのは慣れてるよ」


ドキリ。
顔は全然違うのに、笑ったときの表情が一瞬、昇さんに見えた。


あたし……
晶のこと意識しちゃってる……?