「もう、明日で76年も経づんだな」
「明日!?今、明日って言いました?明日、何があるんです?」
「アニさんの命日だ」
「そんな!ごめんなさい、あたし失礼します!」
「あっ、待てよ弥生!」
「ごめん晶!でもあたし行かなきゃ!」


明日なんて明日なんて!

どんな地獄でも、昇さんはまだまだ歩き続けると思ってた。そんな保証どこにもなかったのに!

そうだよ、みんないつだって突然だった。体調を崩したら、あっという間に。川に飲まれたら、本当に本当にあっという間。

昇さんがサルミの手前、トル川まではなんとか辿り着くだろう、って、あたしはなんて能天気なんだろう。

ゲニムより西は、それまでとは比べ物にならない苛酷さだと書いてあるのを読んだのに、この期に及んであたしは!

死なせない!
あたしが昇さんを助けるんだ。

服の中に入れていける分なら一緒に持っていける。腰に着けた刀が時を超えたんだから、体にくっついてればいけるはず!

あたしはチャリに跨って、全速力で家に向かった。