あれから数日後。
おじいちゃんに会うために、晶の家に向かう。やっぱり晶が昇さんだなんて、いまだに信じられない。
だけど、私が話していないいくつかの出来事を知っていたりして、やっぱりそうなのかな?って思い始めてはいる。
「あのネガ、いくつか写真が出せたよ」
「本当!?」
晶が、軍服と一緒に戻ってきたフィルムを現像してくれた。カメラオタクが幼なじみで良かったって、めちゃめちゃ思う。
「36コマくらいはあるフィルムだけど、実際に画像が残ってるのは数枚だけだった」
「そっか。でもすごい!見せて」
なるべく濡れないようにしていたけど、雨とか凄かったからかな。
「おじゃまします」
晶の家に上がるのは久しぶりだ。子供の時以来だから、ちょっと緊張する。部屋にあがって、さっそく写真を見せてもらった。
そこには、あたしが会う前の昇さんが見た場面が写っていた。
採ったヤシの実で顔を挟んでおどける軍人さんがいた。肩を組んで歌っているのか笑っているのか、楽しそうな人がいた。同じ部隊だった向井さんも、まだふっくらした頬を輝かせて笑っている。
『縁起でもないが、写真1枚残さず死んでいくなんてそのほうがよっぽど酷い話だろ』
昇さんが言っていた言葉……そうだね、本当にそうだよ。やせ細って死んでいった向井さんの最期の顔が、今、あたしの中で笑顔の向井さんに書き換わった。
昇さんの写真は、なかった。それから、昇さんがあたしを撮った写真も……。でもこれを、ここに映ってる人たちの家族に見せてあげたい……。
「誰が誰か、わかる?」
「うーん。記憶が曖昧だな。とりあえず、じいちゃんの話を聞いてみよう。ボケてるけど、昔のことは結構よく覚えてるんだよ」