朝早くに、昇さんと阿久津さんは出発した。
阿久津さんは、必ず2人で来いよって言ってくれた。
だけど昇さんは、無言だった。
あたしは、自分でその手を離したくせに、振られた感でいっぱいだった。
付き合ってなんかないし、告白すらしてないのに。
だけど、今はそんなことで悲しんでる場合じゃない。
山根さんの熱はまだ高いけど、症状は落ち着いている。
だけど朦朧としていて、朝ごはん分の焼きガニを鉄帽の中ですりつぶすようにしたものを口に運んでみたけど、口を開ける気にもなれないようだった。
もしも…山根さんがここでダメだったら、ひとりで何もできないあたしもそのうち飢えるかなにかで死ぬんだろう。
逆に山根さんが回復したら、一緒になんとかやっていきたい。
あたし…山根さんで賭けをしてる。
サイテーだ。
「や、よいちゃん?」
「おはよう!」
朦朧としてた山根さんが、意識を取り戻した!
「そうか…弥生ちゃんがいてくれたのか。だから……」
「なに?」
「嫁さんの夢を見てたんだ」
「奥さん?結婚してたんだ!」
「ああ。俺なんかにゃ勿体ない別嬪でよ」
そう言って、ニンマリしてみせた山根さんがなんだか可愛かった。
それから、その別嬪の奥さんのノロケ話をたくさん聞いた。
山根さんは、少しだけカニを食べてくれた。
日が高くなってきた頃だった。
「寒い…」
「え?」
キャミソールワンピ1枚で過ごしたいくらいの暑さなのに、山根さんがガタガタと震えだして、寒い寒いと言っている。
また、熱が上がってるのかも。
そう思って額に手を当ててみた。
熱っつ!
でもこの熱と震えなのに、山根さんは汗ひとつかいてない。
というか、水分足りてないんじゃ…
「山根さん、水。お水飲んで」
「い、嫌だ、寒い、寒いよ、身体じゅうが痛いよ…」
あたしの知ってる病気でいったら、インフルエンザみたいな感じだ。
みんなが言っていたマラリアか、何か他の感染症かはわからないけど、山根さんの体力が勝つか、ウイルスとかそっち系のほうが勝つか、そういう感じ。
でも病名がわかったところで薬も何もないんだから、そこは考えても無駄。
とにかく、熱が出たら頭を冷たく、それだけをなんとかこなそう。
「死ねっ!これでもくらえぇっ!」
「山根さん!?」
「はあ、はあ。どうだ、参ったか!」
山根さんが、急に叫びだした。
どうしちゃったの?
幻覚?
「うわーっはっはっはっ!!」
病人とは思えないほどの声と動きで、どうやら敵と戦ってる?みたい。
「あああ!来るな!来るなぁ!」
「山根さん…」
「うわあぁぁ!」
え?
様子が変わった。
今度は目の前を手で必死に振り払っている。
さっきまでの猛々しさはなくって、まるで怯えた子供みたい。
「山根さんっ!ねえ!」
どんなに声を掛けても、あたしの声は聞こえないみたいだった。
「か、和子、和子!ああぁ、和子!!」
「きゃっ」
「会いたかった、会いたかったぞ和子ぉ!皆は無事か?元気か?」
「ちょ、ちょっと…」
今度はたぶん奥さんの幻覚……
ちょ…っとびっくりする。
だってこんなにもきつく抱きしめられるなんて。
「う、ううぅ」
「山根さん?」
「頭が、痛い……割れるようだ。助…けて、くれ…」
信じられないくらいにシャッキリしてた山根さんが、また元の具合に戻った。
しかも頭を抱えて横たわって、暴れまわってる。
どうしよう、すごく痛そうだよ…
でもあたしはオロオロするしかできなかった。
阿久津さんは、必ず2人で来いよって言ってくれた。
だけど昇さんは、無言だった。
あたしは、自分でその手を離したくせに、振られた感でいっぱいだった。
付き合ってなんかないし、告白すらしてないのに。
だけど、今はそんなことで悲しんでる場合じゃない。
山根さんの熱はまだ高いけど、症状は落ち着いている。
だけど朦朧としていて、朝ごはん分の焼きガニを鉄帽の中ですりつぶすようにしたものを口に運んでみたけど、口を開ける気にもなれないようだった。
もしも…山根さんがここでダメだったら、ひとりで何もできないあたしもそのうち飢えるかなにかで死ぬんだろう。
逆に山根さんが回復したら、一緒になんとかやっていきたい。
あたし…山根さんで賭けをしてる。
サイテーだ。
「や、よいちゃん?」
「おはよう!」
朦朧としてた山根さんが、意識を取り戻した!
「そうか…弥生ちゃんがいてくれたのか。だから……」
「なに?」
「嫁さんの夢を見てたんだ」
「奥さん?結婚してたんだ!」
「ああ。俺なんかにゃ勿体ない別嬪でよ」
そう言って、ニンマリしてみせた山根さんがなんだか可愛かった。
それから、その別嬪の奥さんのノロケ話をたくさん聞いた。
山根さんは、少しだけカニを食べてくれた。
日が高くなってきた頃だった。
「寒い…」
「え?」
キャミソールワンピ1枚で過ごしたいくらいの暑さなのに、山根さんがガタガタと震えだして、寒い寒いと言っている。
また、熱が上がってるのかも。
そう思って額に手を当ててみた。
熱っつ!
でもこの熱と震えなのに、山根さんは汗ひとつかいてない。
というか、水分足りてないんじゃ…
「山根さん、水。お水飲んで」
「い、嫌だ、寒い、寒いよ、身体じゅうが痛いよ…」
あたしの知ってる病気でいったら、インフルエンザみたいな感じだ。
みんなが言っていたマラリアか、何か他の感染症かはわからないけど、山根さんの体力が勝つか、ウイルスとかそっち系のほうが勝つか、そういう感じ。
でも病名がわかったところで薬も何もないんだから、そこは考えても無駄。
とにかく、熱が出たら頭を冷たく、それだけをなんとかこなそう。
「死ねっ!これでもくらえぇっ!」
「山根さん!?」
「はあ、はあ。どうだ、参ったか!」
山根さんが、急に叫びだした。
どうしちゃったの?
幻覚?
「うわーっはっはっはっ!!」
病人とは思えないほどの声と動きで、どうやら敵と戦ってる?みたい。
「あああ!来るな!来るなぁ!」
「山根さん…」
「うわあぁぁ!」
え?
様子が変わった。
今度は目の前を手で必死に振り払っている。
さっきまでの猛々しさはなくって、まるで怯えた子供みたい。
「山根さんっ!ねえ!」
どんなに声を掛けても、あたしの声は聞こえないみたいだった。
「か、和子、和子!ああぁ、和子!!」
「きゃっ」
「会いたかった、会いたかったぞ和子ぉ!皆は無事か?元気か?」
「ちょ、ちょっと…」
今度はたぶん奥さんの幻覚……
ちょ…っとびっくりする。
だってこんなにもきつく抱きしめられるなんて。
「う、ううぅ」
「山根さん?」
「頭が、痛い……割れるようだ。助…けて、くれ…」
信じられないくらいにシャッキリしてた山根さんが、また元の具合に戻った。
しかも頭を抱えて横たわって、暴れまわってる。
どうしよう、すごく痛そうだよ…
でもあたしはオロオロするしかできなかった。