ていうか玲奈には彼氏いるし、それなのになんで晶のことなんか。


「とにかく、晶は全然カッコ良くないと思うよ」
「そーお? 幼なじみの恋とかないの?」
「ない! 絶対ないから! あたしはもっとギリギリドキドキの恋がいいのっ」


 あたしと、ってことか! ないないない! ホントないから。


「あたしの理想はあたしのために命賭けてくれる男の人だよ。そのために特攻隊に志願しちゃうみたいな……」
「出たよ。やよのその想像力ってどっからくるの? 戦争起きるまで彼氏できないんだったら、やよ一生彼氏できないよー。せっかく可愛いのに」


 別に可愛くはないと思う。ハッキリ顔で、どっちかっていうと男だったら割とイケメンだったかなとは思う。でも守ってあげたさみたいな成分が不足してる感じ。玲奈は真逆で、女のあたしがみても可愛くて守ってあげたくなるタイプ。そんなあたしを玲奈がしょーもないものを見るような目で笑う。


「だって昨日の『初恋散華』めっさ泣いたもん」
「ああ、特攻隊のやつね。ああいうの観たあとだいたいこうだよね」
「死んじゃうんだよ、行ったら死んじゃうの分かってて、好きな人のために行っちゃうんだよ、凄いじゃん! そんな風に想われたいじゃん?」
「まーそれも分からなくはないけど、平和がイチバンだよ」
「もぉー。そんなの当たり前じゃん。分かってるって」


 分かってる。平和がイチバン。安定こそ幸せ。でも……、じゃあどうしてフィクションの世界はあんなにキラキラ輝いてるんだろうって、思ってしまう。そんなことを考えながら、あたしはチョイ焦げたから揚げの衣を剥くのがめんどくさくなって、お弁当箱のフタを閉じた。