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あたしたちはあの日以来、ほとんど話すことなく歩き続けた。


向井さんを丁重に埋葬して予定より少し遅く出発した朝は、快晴だった。

方向的に流されてきた川に沿って戻ると、生い茂る樹々の隙間から太陽を反射させてキラキラ光る水面が見えた。


水が…引いていた。


それを見た時の昇さんの顔が忘れられない。


きっと自分を責めてる。

一晩だけ待てば、って。

そう思った。


だけど、前日あんな勝手なことを言ったあたしが掛けられる言葉なんか、あるはずがなくて。


そんなあたしと昇さんの空気を読んで、腫れ物に触るような、というか触らない阿久津さんと山根さん。


いっそ昇さんが俺のせいだ!とか言って喚いてくれたらいいのに、なんて思うけど、昇さんは絶対そんなところ見せないだろうな。


今、あたしたちを繋いでいるのは、向井さんの形見だ。


山根さんは裸にしちゃ気の毒だって一度反対したけど、軍服と鉄帽、天幕と刀をひとりずつ持つことにした。

誰かが生きて帰ったら、家族に渡そうって。


あたしは鉄帽を被っていなかったから、鉄帽を。


向井さん、あたし。

…必ず、届けるから。