その晩、あたしたちは数日ぶりの白いご飯と、食べきれないほどの焼魚を頬張った。

昇さんが残り少ない塩をふって焼いてくれた魚は、少しお母さんの味がした。

家じゃ、夕飯が焼魚の日は葉月と文句を言いながら嫌々食べてた。

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

湖の魚は少し泥臭かったけど、それでも本当に今まで食べたどんな魚よりも美味しく感じた。


昇さんとふたり、その日は満腹でぐっすり……

……のはずだった。


「っく……」
「大丈夫か?俺もおかしいんだ」
「行って、きます、絶対こっちこないでね!」


眠りについて少ししたあたりで、お腹がきゅるきゅると痛み出した。

今はその100倍の痛みに耐えきれず、テントからできるだけ離れたところで用を足そうと、体をくの字にしながらなんとか歩いてるところ。

新鮮なのに焼いて食べてもお腹壊すの?なんで?

あたしの頭の中はハテナでいっぱいだった。



だけど考えてもわかるわけもなく、ただひたすら治まるまで耐えるのみだ。


そうしているうちに空が白くなってきて、ようやく落ち着いてきたあたしはテントに戻った。


「おかえり。治まったか?」
「うん、なんとか。昇さんは?」
「俺はそう酷くなかったから、しばらくして治まったよ。こりゃ久々にたらふく食ったせいか湖の水かな」
「あ、飲んだつもりなくてもあるんだね…恥ずかしいから言わなかったけど、河を渡ったあとも少しなったんだ」
「そうか…獲ってる時に少し口に入ったかもな。なんにしても大事なさそうで良かった」


こんな話を好きな人とするなんて…

もう絶対に昇さんとは恋人にはなれないな。

ていうかあたし、生男だし。

もうどっちかっていうと、戦友だよね。

『同期の櫻』って感じ?