「ああそうだ。ホルランヂヤでもお前に会ってるな」
「え?」
「海岸で会ったろ。着てるものが違うけど、髪が同じだ」
「あ」


昇さんは肩から掛けたカバンの中から、古めかしい型のカメラを出して掲げてみせた。

あの砂浜で見た軍人さんは、昇さんだった。


校外授業だったから、あの時は制服だったんだっけ。


「行ったり来たり出来るってことか?」
「ううん。勝手に飛んできちゃうの。戻る時も急に」
「そうか…じゃあ今度もわからないってことか」
「うん…」


でも、そういえば。

あれはたしか4日前…

昇さんもあたしも、4日前に会ってるってことは。


「昇さん、今日は何月何日?」
「4月25日だ」
「同じ!」
「なにがだ」
「ほら、みて!スマホのカレンダー、4月25日でしょ!」
「2020年…頭が変になりそうだな」
「それを言わないでよ、あたしだって変になりそうなのに」


カレンダーは、4月25日のところだけ色付きで表示されている。

つまり、あたしのいた時代と、この時代、日付が同じ。


「それで、海で会った日は?」
「ホルランヂヤに米軍機が大挙襲来した日だったから、21日だ」
「やっぱり!あたしも校外授業、21日だった!」


別に異世界に来てしまったというわけではないから、1日が24時間なのは同じで当然なんだけど、日付がピッタリ同じなのにはなんとなく驚きというか、嬉しさみたいなものがこみ上げた。

なんていうか、規則性があるなら帰れそうな気がする、みたいな。

でもこの間は本当に一瞬で、今回はこんなに話し込んでるけどまだ戻る気配はない。

こういう場合、もうこっちでしばらく過ごすしかないんだろうな。


「あの時の写真、見れる?」
「現像所が基地内なんだ。敵の手中にあるうちは無理だな。だがすぐに奪還するさ」
「そっか…」


昇さんの目が強い意志でキラキラ光る。

日本が勝つこと、信じてるんだな…


ここでの戦いがどうなるのかはわからないけど、あたしは知ってるんだ。

昭和20年の終戦に向けて、19年頃はいろんなところで日本が負け続きになってたってこと。


ごめんなさい、嘘、ついて。


日本は、負けちゃうんだよ…


でもこんなこと、言っても信じないだろうし、信じたら逆に辛いよね。


だから、これは。


絶対に秘密だ。