「ううむ…怪しいな。顔と言葉は日本人だが、その赤い髪といい格好といい、西洋人みたいじゃないか…まさか敵国の人間じゃないだろうな」


おかしな格好でおかしなことを言うあたしを警戒しだしたのか、男の人が険しい顔つきになった。


待って待って!

あたし、ただの女子高生ですからっ!


「あっ、違います!信じてもらえないかもしれないけど、まだあたしも信じられないんですけど、あのっ、タイムスリップって、わかりますか?」
「この状況で女子が軍人を前に敵性語とは、いい度胸だな」
「適正後?なんですかそれ?」
「敵性語を知らんのか?本当にどうなってるんだ…貴様、何者だ?」


タイムスリップ、わからないか。

んー…


「あたし、未来から来たんです!令和2年!えっと…60年?70年かも!それくらい先から飛ばされてきちゃったみたいなんです!」
「ふう…何かを隠し立てしての発言でないなら、本当に頭を打ったか恐怖でおかしくなってるんだな。可哀そうに」


男の人が、頭を掻いてやれやれという風で、あたしをチラチラと覗き見るような顔をしている。


どうしよう…

なにか信じてもらえるようなもの…


「…貴様ァ!やはり敵国から送り込まれてきた諜報員か!迂闊にそんなものを着てのこのこやって来るとは、余程の阿呆か愛国者にも程があるっ!」
「ひっ!」


突然、威圧的な太い声を浴びせられ、体がまた硬直した。

貴様、なんて学年主任の田村が言うのくらいしか聞いたことないけど、それより100倍、ううん、1000倍怖いよ。

あたしを助けてくれたはずの男の人が、短刀を抜いてあたしに突き付けてきた。

ものすごい目で男の人が睨んでいるのは、あたしの胸元だった。

正確には、胸元の、プリントだ。


ピンクラメにシルバーのプリントがしてあるお気に入りのロンT。

…ああ、そういえば。

あたし、絶体絶命だ。

なんでって。


これ、なんか英語の文章プラス、アメリカ国旗のプリントだよ………!!