「…不倫相手にはもってこいってか、」
ハハッと心にもなく乾ききった笑い声は実に虚しい。
自分の弾いた言葉が的を得すぎていて、自分のタチを語る程にただの都合の良い女だった様な気がして。
『日陽ひよ、』
「……やめた」
今どんなに過去の時間に思考を巡らせてもマイナスな結論しか生み出せないだろうし。
本人不在の中きっとあれもこれもこうだったんでしょう!と言うのは自分の痛みを誤魔化したいが故の被害妄想だ。
報われはしないものではあったけどさ、私は全力を注いだし、彼もまた全てでなくとも確かと感じる愛情を注いでくれた。
だったら、
「良い恋愛だった!」
そう締めて終わるのが一番じゃない、お互いに。
『乾杯』とばかり、既に開封されていたビール缶を軽く掲げ、ゴクリゴクリと中身の消化。
そんな感じにもう何本の空き缶を作ったやら。
気がつけば23時30程。
いつまでもここで何をしているのか。
「往生際が悪いのかな…」
失恋を機に全てが面倒になって地元の帰還したってのに。
この町を出たのは19の時か?
今は25。
盆や正月には顔出しに帰ってきてはいたけども…。
でも、それだけ。
親兄弟に顔を見せる以外の目的などなく、きっちり義理を果たせば直ぐに都心の自宅に戻っていた今まで。
だから、こんな風に特別な日以外に帰郷したのは初めてと言えるかもしれない。
正直、帰りたいわけじゃなかった。
別に家族と不仲なんて事はないけれど、身内の自分への干渉はそれこそ盆暮れ正月くらいで十分。
そんな抵抗がどうにも現状にも作用して往生際悪く自分の足を帰るべき実家から遠ざけているらしい。