「というわけで風師さん、即決で採用です」

「はい………………って、え? さ、採用っ?」

 時花の声が裏返った。

 即決にもほどがある。まだ面接を始めて一〇分も経っていない。採用は嬉しいが、いくら何でも早すぎだ。

「あ、あのう」恐る恐る挙手する時花。「私の経歴とか、退職後の空白期間(ブランク)とか、詳しく聞かないんですか……?」

「履歴書に書いてあることをわざわざ尋ねるのは、時間の無駄です。ブランク? 新社会人が速攻で辞めて再就職に勤しむなんて、今どきありふれていますよ」

 ずぼらと言うよりは、おおらかな人柄なのかも知れない。

 時花は店長にますます引き込まれた。

(間抜けな私を拾ってくれるなんて、神か仏か天使に違いないですっ!)

 人の過去に執着しない、女の経歴を詮索しない……何と寛大なのだろう。心意気からして男前(イケメン)ではないか。

 一目惚れなんて次元ではない。店長は優しい。店長は寛大だ。店長は困っている乙女に手を差し伸べる。理想の男性像だ。最強すぎる。惚れる。濡れる。抱いて下さい! これはもう運命と言っても差し支えなかった――時花の中でだけ。