「私は最初、ケンが私を殺そうとしてるって思ったんだよ。だから前回の時も警察を呼んでケンを捕まえてもらえばーーって」


そうすれば何もかも解決すると思った。だけど解決なんてしなかった。


「カヨは自分がタイムリープをしていると言っただろ」

「うん、確証はないけどそうなんだと思う」


確証がないのは、自分の意思でしている訳でもないし、どういう仕組みでそれができているのかも分からないから。

それに、タイムリープを繰り返しているとしても、いつも同じ9月26日だから。それ以上の過去に戻る訳でも、26日を過ぎる訳でもなく、毎回同じ1日だけ。


「違うんだ、カヨ」


ケンは眼鏡を掛け直し、ブリッジ部分をクイっと持ち上げた。現在のケンは眼鏡なんてしてないし、コンタクトもしていない。視力は良い方とは言えないけれど、大人になってきっとキープしていた視力を落としたのかもしれない。

だけどその眼鏡の向こう側にある瞳は、現在のケンと同じでとても澄んだ瞳をしている。


「タイムリープをしているのはカヨじゃなくて、俺なんだ」

「えっ……?」


未来のケンは左腕につけてある時計をチラリと見やった後、話をこう続けた。


「順を追って話そう。聞いてる感じだとカヨは3回タイムリープを繰り返してるって思ってるんだよな? ここにいる今が4回目、そうだろ?」

「うん……違うの?」

「実際は5回、今は6回目のタイムリープになる」


そんなに? 私は記憶をたどるようにしてなんとなく空を見やった。空はいつもと同じ、晴れ。雲がゆっくりと流れる様子をじっと見つめながら、記憶を整理した。

私がトラックに轢かれた時、ことりちゃんが轢かれた時、そして前回の陸橋……どうしてもその前に同じ日を繰り返したという記憶がない。