「私、やっぱり死ぬんだ……」


私はトラックに轢かれる夢を見た。ううん、それは夢じゃなかったんだって、今なら分かる。

私はトラックに轢かれて、死んだ。


「私、初めは夢だと思ったんだ。あんまりよく覚えてなかったし、事故に遭った後は部屋のベッドで目が覚めて、またいつもと同じ日がやって来たから……」


私は足元に視線を落とした。そこにはやたらと目立つ蛍光ピンクの靴紐がこれでもかってほどに眩しく主張を繰り返している。


「でもトラックに轢かれたのは一度きりで、次はことりちゃんが轢かれてたのはなぜ? それに前回は私は陸橋の上から落ちたんだよね?」


そう、トラックに轢かれたのは実際一度きり。けど、その後に繰り返した9月26日は不幸の連続だった。前回陸橋から落ちた時もやばいって思ってたけど、やっぱり私は死んでたんだと思う。

今はこうして存在している訳だから、それもよく分からないけれど。


「カヨ、あんまりよく覚えていないって言ったよな。いつから、どこまでを覚えているんだ?」

「初め、トラックに轢かれた時の記憶は本当に曖昧で、靴紐が切れる事とか、そういったその後のタイムリープで起きた内容と同じ共通点がある出来事くらいしか覚えてない……。その後のは徐々にしか記憶はないけど、前回のはちゃんと覚えてる」


私は足元から視線を外し、再び目の前にいる未来から来たケンに目を向けた。


「それよりどうしてあの時、トラックを運転していたのがケンだったの?」


それが始まりだった。初めて大人になったケンーー私はこのおじさんがケンだと認識する前、未来のケンは私をトラックで轢いたんだ。あの時の記憶があったから私はこの大人になったケンの事を疑った。


「それにその後、ことりちゃんが轢かれる前、私を突き飛ばしたりもしたよね? あれはなんでだったの?」


どんどん疑問が膨らんでいく。ううん、元々あった疑問がやっと解放されて膨れ上がってきているみたいに、私の質問は止まらない。