おじさんは眼鏡を外して私に向かってゆっくりと微笑んだ。

同時に、その顔、その笑顔にはとても見覚えがあって、私は思わず固唾を飲んだ。


「カヨ、俺は未来からお前を助ける為に来たんだ」


無精髭が生えて、髪もずさんに伸びて、ガリガリに痩せちゃって服だってサイズ合ってないし、体型だけじゃなく身長や背格好までも私の知る人物とはかけ離れちゃってるけど、その目を、その笑顔を見れば一発だった。


「……ケン」


私がそう呟くと、目の前にいるおじさんーー大人になったケンが泣きそうな顔をして、笑った。




「ずっと、会いたかった。やっと会えた」




髭で隠れてはいるけれどよく見ると痩せて頬骨は突起しているし、目尻には深いシワが刻まれている。どこか疲れたような表情は大人になった証拠なのかもしれない。

今とは違う姿のケン。声だって今よりももう少し低い気がする。だけどよくよく聞いて見るとケンだとわかるそれに、私はなんとなく悟った。


「……なんだよ、どういうことだよ」


私の真横に立つ“現在”のケンは、疑心暗鬼な様子で私と未来から来たという大人のケンを右往左往するように見やっている。

疑心暗鬼な表情をしているけれど、ケンは分かってると思う。この状況を、というよりも、目の前にいる人物が誰なのかを。