背筋を無数の虫が駆け抜けるようなそんなおぞましさを感じて、瞬時に脳が危険信号を出した。


ーーこの人はやばい、って。


そう思ったと同時に、ケンがスマホのタップし始めた。けどそれをおじさんはすぐさま阻止してケンのスマホを取り上げた。


「返せよ!」

「警察に電話なんてするな、時間を無駄にするだけだ」


おじさんはケンのスマホを取り上げた後、向かってくるケンをひらりと交わして私に向かってこう言った。


「前回のタイムリープで言っただろ。俺はお前を助けに来た、俺はお前の敵じゃないって」


ガツンーーと脳をダイレクトに殴られたような感覚の中、私は今もクリアに記憶している前回の記憶を辿った。

警察の人に捕まえられて身動きが取れなくなっていたこの人は、私にそんな言葉を投げかけていた。

それも切に、それでいて苦しげに。


「あなたも……?」


あなたも私と同じで、同じ日を繰り返しているんですか?


そう言いたかったのに、続きのセリフが全く出てこない。喉の奥で何かが詰まって上手く話せないでいた。

ずっと自分がどうしてこうなっているのか、どうして私だけが同じ日を繰り返しているのか。誰も分かってくれない、誰も同じ日を繰り返しているなんて思っていない世界で、私だけが異物のように存在していた。

出口の見えない迷路の中で、私は孤独と不安を感じていた。この迷路の中は地獄でしかない。

だって、ラストはいつも悲しみと絶望だった。


そんな中で、初めて同じ境遇をしている人を見つけた。そんな人を見つけようなんて思ってもいなかっただけに、ホッとして、思わず涙が出そうになった。