「昔から知ってるってなんだよ。あんたやっぱ変質者かカヨのストーカーかよ」

「それは違う」

「ならどう違うって言うんだよ」

「俺の質問に答えるのが先だ」


この言葉にケンが苛立ちを露わにして、静かに席を立った。その様子を見て私は、慌ててケンとおじさんの間に立った。そして、ケンが何か言う前におじさんに向かってこう言った。


「私はあなたを今日会う前から知っていました。私は何度もあなたを見かけていました」


ケンがポケットからスマホを取り出したのが視界の端で見えた。警察にでも連絡する気かもしれない、ってそう思ったけれど、私はケンに構わずさらに話を続けた。


「信じてもらえるかは分からないんですけど、実は私……何度も今日という日を繰り返してるんです」


このおじさんの言動をおかしいと言うのなら、私のこの説明だって、相当頭がおかしいと思う。そう思って目を伏せたその時、目の前にいるおじさんが肩で息をついたのが視界に入った。

信じてもらえるか分からない。自分でも変だと思っている話を知らない人にするのは、少し勇気がいる。だからこそ、そのため息は私のそんな気持ちをぎゅっと縮めて、羞恥心を増大させる結果となった。


「あ、あの、変なこと言ってすみません」


慌てて言葉を付け足した私の声に重ねるようにして、おじさんはさらりとこう言いのけた。





「やっぱり、気づいてたのか」