思わず膝の上に置いていた手をぎゅっと握りしめた。眼鏡のレンズ越しに見えるおじさんの瞳はまっすぐ私を捉えていた。
血色の悪い肌に無精髭、そして不精に伸びたであろう肩までかかる長い髪を一つに結ぶ風体は、どこか不信感を煽るはずなのに、おじさんの目をまっすぐ見つめると、どこか懐かしさというか身近な感じがして、私は素直に口を開いた。
「はい」
言葉短くそう答えると、おじさんはやっぱりと言わんばかりに小さく肩で息をついた。
「どこで俺を知ったんだ? さっきの横断歩道で会うのが初めてだろ? その割にお前は横断歩道越しに俺をじっと見ていた。違和感を感じるほどにな」
「それを言うならおっさんこそカヨの事をどこで知ったんだよ。そもそもさっき横断歩道でのことを言うのなら、俺だってあんたを見てたんだぞ」
ケンが間に入ってきたけれど、おじさんはケンの方には見向きもしないでケンの質問の答えを私に向けて放った。
「俺はカヨの事を昔から知ってる。それに横断歩道でお前も俺の事を見てるのは知ってたが、カヨはもっと強い眼差しで俺を見据えてた。知らない相手を見るようなそんな目じゃなかった」
なんとなく客観的にこの口ぶりだけを聞いているとストーカーかと思えるけれど、不思議と変な気がしない。だって私もこの人の事を知っている。何度も夢を見るようにこの人に会っている。それも何度も何度も。
血色の悪い肌に無精髭、そして不精に伸びたであろう肩までかかる長い髪を一つに結ぶ風体は、どこか不信感を煽るはずなのに、おじさんの目をまっすぐ見つめると、どこか懐かしさというか身近な感じがして、私は素直に口を開いた。
「はい」
言葉短くそう答えると、おじさんはやっぱりと言わんばかりに小さく肩で息をついた。
「どこで俺を知ったんだ? さっきの横断歩道で会うのが初めてだろ? その割にお前は横断歩道越しに俺をじっと見ていた。違和感を感じるほどにな」
「それを言うならおっさんこそカヨの事をどこで知ったんだよ。そもそもさっき横断歩道でのことを言うのなら、俺だってあんたを見てたんだぞ」
ケンが間に入ってきたけれど、おじさんはケンの方には見向きもしないでケンの質問の答えを私に向けて放った。
「俺はカヨの事を昔から知ってる。それに横断歩道でお前も俺の事を見てるのは知ってたが、カヨはもっと強い眼差しで俺を見据えてた。知らない相手を見るようなそんな目じゃなかった」
なんとなく客観的にこの口ぶりだけを聞いているとストーカーかと思えるけれど、不思議と変な気がしない。だって私もこの人の事を知っている。何度も夢を見るようにこの人に会っている。それも何度も何度も。