「っで、おっさんどこまで行く気だよ」

「すぐそこの公園だ」


あの横断歩道を抜けてから少し経った頃、目の前に小さな公園がひっそりと住宅地の中に佇んでいた。小さな滑り台一つと、ブランコが二つ。あとは木製のベンチがあるだけの本当に小さな公園だった。

どれも年季が入っていて、ここの近くに住む住人以外は使用しないだろうと思われるほどこじんまりとした、殺風景な光景だけが広がっていた。


「ここで話をしよう」


そう言っておじさんはベンチのそばで立ち止まった。


「おっさんはなんでカヨの事を知ってるんだ?」


最初に口火を切ったのはケン。ケンはおじさんが立ってるそばにあるベンチの手すりに軽く腰を下ろしておじさんに挑むような目でそう言った。

そんな眼差しにも動じる様子もなく、おじさんはかけていた眼鏡のレンズとレンズの間のブリッジ部分をクイッと中指で持ち上げてから口を開いた。


「一つ先に言っておきたいんだが、おっさんってお前に言われるととてもなんとも言えない気分というか……腹が立つからやめろ」


腹が立つと言いつつ怒る様子は見せず、そう淡々と言いのけた。

そりゃそうだ。こんな幾つも年が離れた高校生に偉そうにタメ口でおっさんなんて呼ばれたら誰だってイラつくに決まっている。


「じゃあ、まずおっさんが誰なのか教えろよ。じゃないと俺はあんたの名前だって知らないんだ」

「……分かった。だがしかし、その前に俺も聞きたいことがある」


そう言っておじさんは私に向き合った。私はベンチのケンが座っている手すり部分のすぐ隣にちょこんと座った直後だった。


「カヨは俺のことを知っている、よな?」