やっぱり疑った方がいいのかもしれない。

一度目は私をトラックで轢いた。二度目は私を道路へと突き飛ばした。あの時は私が事故に遭わずことりちゃんが遭ったのだけれど……。


一度目の時、あの人すごく驚いた顔をしてた。それも恐怖の顔だった。

一度目の記憶は不完全で、二度目もあやふやなところが少しある。だから二度目に関してはぶつかろうとする自転車から助けようとしてくれたようにも思えるし、単に道路に突き出そうとしたようにも思える。

前回ケンが言ったように、自分の手で殺したいと思っていたのなら……。

前回のはちゃんと覚えてる。その状況とか記憶とかそういった類いのものに引っ張られるようにして、私はあの一度目の状況を思い出したんだ。


「おい、カヨ、あいつの事か?」


その声にハッとして知らない間に下がっていた頭を上げた。


「白いシャツに、無精髭。それに長めの髪を人つ括りにしてるおっさんだろ」

「うん、そう……そう、あの人」


信号が青に変わるまで私とケンはジッとあのおじさんに目を向けていた。

太陽が逆光しているせいで、おじさんの表情までは読み取れない。おじさんがかける眼鏡の反射を受けて私は思わず顔を背けた、その時だった。


「カヨ、行くぞ」


信号が青に変わってケンが私に合図を送るように声をかけ、私もゆっくりと横断を始めた。

ゆっくりと歩いていたその時、足元でプツリと何かが切れる音がして、私は思わず倒れ込みそうになったけど、抱き抱えるように助けてくれたのはあのおじさんではなく、側にいたケンだった。

あれ? って思ったけど、靴紐の事をケンにも話していたから咄嗟に動けたのだろうと思いつつ、今度は足元の違和感に目を向けた。

違和感の原因は知っている。知ってるはずなのに、私は倒れそうになったのだ。