「佳代子、いつまで寝てるの。とっくにケンちゃんが迎えに来てるわよー」


そんな風に叫ぶお母さんの声を聞いたと同時に、私は部屋を出た。お母さんに返事を返す気にもなれず、私はただ着替えの服を持って洗面所へと向かった。すると、もう私からしてみればお約束とも思える光景、ケンが洗面所の前で私を待っていた。


「どうしたんだよ。お前、顔色悪いぞ?」


自分がどんな表情をしているかは言われなくても分かってるし、鏡を見なくてもどういう顔色をしているのかも知っている。

私は前回この光景を見ている。ことりちゃんが事故に遭って、そこで目が覚めた。あの時も同じように私の顔からは色というものが一切消えていた。


「ケン、先に行ってて」


私はそれだけ言ってケンを押しのけて洗面所の扉を開けた。すると不満そうなケンの声が後方から聞こえてきた。


「なんだよ、体調悪いのかよ。それならそうと先に言えよ。先にメッセージ送ってくれてたら俺ももっとゆっくり来れたじゃねーかよ」


なんでケンも遅れて行く気なのよ。……って思わずツッコミそうになって、気が滅入っていたはずなのに、なんだか笑えた。


「ケン、やっぱ待ってて。話があるの」


私はもう一度ケンにこの状況のことを話すことにした。初めはもう話をしなくてもいいやって思ったけれど、実際ケンの力が必要になるかもしれないって思って話す事を決意した。