「君達、さっき警察に通報してくれた子達だね?」


そう言いながら男性は内ポケットからこっそりと警察手帳を見せてくれた。


「電話で言ってた不審者っていうのはどの人かな?」

「今階段を上がって来てるあの白いワイシャツを着たヒゲのおじさんです。髪を後ろに括ってる人」


ケンが私に代わって全て話をしてくれた。すると警察の男性はイヤホンで別の警察官と情報を共有して、すぐ近くで電話をしていた別の男性が動き出した。

ケンが言う通り電話をしていた男性も警察官だったみたい。電話をしていた警察官は陸橋を登りきったあのおじさんに向かって歩き出し、ポケットから警察手帳を取り出した。


と、その瞬間、私はおじさんと目が合った。


なんで? ていう疑問の顔で私に何かを訴えかけようとしてる事はその表情を見れば一発だ。


……間違えた? そんな不安が頭を過ぎる。


もしかしてあの人つけてきてたつもりはないのかもしれない。いや、でも私はあの人に殺されたんだし……。

でもやっぱりそれは、夢だったのかな……?


一気に罪悪感が私の心を支配し始めて、思わずおじさんから目を逸らした。すると、警察の人と話をしていたおじさんは駆け出して私の元へ駆け出した。

怖い、そう思った瞬間、壁のように私の前に立ったのはケン。そして、中年警察官も私の壁になりつつ、あの不審な男性に向かって歩き出した。

前方と後方、どちらからも警察の人に挟まれた男性はあっさりと取り抑えられて、その細身の体を地面に叩きつけられている。


「大丈夫。もうあいつは何もできねーよ」


そう言って、ケンは私の肩に手を乗せた。どうやら私の体は震えていたようだ。