「二人仲良く遅刻とはいい度胸だな」


授業開始のチャイムが鳴り終わったと同時に私とケンは教室に到着した。校門から全力疾走でここまで向かったのに一足間に合わなかった。


「でもほぼセーフですよね?」

「だがほぼセーフってのはアウトってことだろう?」


担任の先生はいつも規則に厳しい。こんな少しくらいの遅刻、他の先生なら絶対見逃してくれるのにそうしてくれないところが融通きかないなっていつも思う。


「種田、先生は融通がきかないとか思ってるだろう?」

「そんな事微塵も思っていません」

「嘘つけ、顔に書いてあるぞ」


私は顔を思わず拭った。すると先生はははっと笑ってケンに目を向けた。


「種田は分かりやすいからな。大久保は逆だが」


その意見には同意だ。ケンは昔から何事にも動じないというか、特に身内以外にはポーカーフェイスを決め込んでいる。

これだけ同じ環境で生きてきたというのに、そこは真逆なのが不思議だ。

まぁ、両親が違うからってのは大きいとは思うけど。

ケンの両親は私のところとは違って共働きだ。

ケンママはCAの仕事に就いているから夜遅かったり帰ってこない事もよくあるし、ケンパパは大手企業で働く研究員。

なんの研究をしてるのかまでは内部秘密らしいからよくわかんないけど、とりあえずうちのお父さんとは違って頭がとてと良い。

ケンの頭の良さをそう考えると、やっぱり両親から引き継いだものというのは大きいと思う。

うちのお父さんは普通のサラリーマンだし、お母さんも昼間はパートに出かける程度の普通の家庭だ。両親の学力なんて中か、良くて中の少し上といったところじゃないだろうか。