「落ち着けって、今朝話した通りおっさんをあの陸橋の上までおびき寄せるぞ。

「で、でもそれまでにあの人が何かしてきたらどうするの?」


私はチラリと背後に目を向けた。だけどちょうど人混みに紛れてるあの人は見つけることはできなかった。


「大丈夫だって。ちゃんと相手との距離はとってるし、もし何かしてきたらそれはそれで俺がガードするから心配するな」

「うん、分かった」


ケンはいつになく真剣な顔でそう言った。いつもはあまり表情を表さないし、今もぶっきらぼうに見える表情をしてるけど、ケンが真剣なのはその目や言葉尻を聞けばよくわかる。

だから私も少し安心しつつ、気を引き締めた。


私達は街中にある陸橋へと向かった。学校に戻る前、私達はどうやってあの人に立ち向かえばいいのか考えた結果、一つの案を講じた。それを実行するのがあの陸橋の上だ。

陸橋の上なら自転車もトラックも邪魔をしないし、逃げ道も決まってる。それに学校を出る前にケンはトイレに行くフリをして警察に連絡を入れている。

数日前から見かける人が私の事を付け回していて、今日もつけられてるからって言って、陸橋までおびき寄せるから私服警官にそこで不審者の男を捕まえて欲しいと伝えてある。

警察は事件が起きない限り動かないって聞いたことがあったけど、逮捕が無理でも事情聴取とかしてもらえれば相手が何者かもわかるし下手な行動も取りにくくなる。それに今日という日を乗り切る事だってできるって言ってケンがセッティングしてくれている。

全て順調にいってる。だから大丈夫。

そう思う一方で、どうしてもまだ不安が拭いきれない。