ーー放課後。


「ことりちゃん、タクシー呼んどいたから門まで一緒に行こう」

「えー、本当に呼んでくれたのー!?」


ことりちゃんがタクシーを使ったふりして後日お金だけ返そうとする可能性もあるから、私達は先手を打ってタクシー会社に連絡しておいた。

それでもことりちゃんがタクシーに乗り込むまでは安心できない。ううん、家に着いたって連絡をもらうまでは気を抜けない。


「さっ、ことりちゃん帰ろう。あっ、荷物はケンが持ってくれるから大丈夫だよ。ねっ? じいや」

「誰がじいやだ」


そう言いながらもケンはことりちゃんのリュックを取り上げて自分のものと二つを片側の肩にかけた。


「大久保くん、大丈夫あたし持てるから」

「どうせ校門までだろ、気にすんな」


そう言ってケンは私とことりちゃんを置いてさっさと教室を出て行ってしまった。


「ことりちゃん、歩ける? 私たちはゆっくり行こうね」


ことりちゃんをエスコートするつもりで腕を差し出したけど、ふわふわ笑顔で断られた。


「うん、でもなんかごめんねー、あたしが鈍臭いばっかりに迷惑かけちゃって。カヨちゃんも体調良くなった?」

「私はもうバッチリ」

「そっか、それなら良かったー」


いつものたわいない話をしながら私達が校門まで着くと、門を出てすぐのところにタクシーが止まっていた。ドライバーの目の前にある電光掲示板には“貸切”の文字が書かれていた。


「それじゃことりちゃん、家に着いたらメッセージ送ってね。ちゃんと家の目の前までタクシーで帰るんだよ」

「うん、分かってるよ。じゃあまた明日ねー。大久保くんもありがとうー」


そう言って天使の笑顔を持つことりちゃんはタクシーに乗って去って行った。