「あれー、カヨちゃん今日休むんじゃなかったのー?」


3時間目が終わった後の休み時間。私とケンは教室にたどり着いた。


「うん、私の大事なことりちゃんが心配だったから駆けつけて来ちゃった」


なんて、口では冗談を言いながらも内心は本気だ。スカートの裾からチラリと見える膝の包帯を見て、私は再びめまいを起こしそうだったけど、新しく買ったローファーで地に足をしっかり付けてグッと堪えた。


「えー、そんな大層なことじゃないのにー」


そう言ってことりちゃんはちょっと照れくさそうにしながら、膝の包帯をスカートの裾で覆い隠した。


「大層な事だよ。ことりちゃん歩ける? 帰りはタクシーで帰った方がいいよ」

「えっ? 大丈夫だよ。タクシーなんて大げさだなぁ」


ことりちゃんがクスクスと笑っているけれど、私は財布の中から千円札を取り出した。今日ローファーも買ったし、今月はもう何も買えないけど別にいい。そう思って取り出した千円札をことりちゃんの机の上に置いた。


「大げさなんかじゃないから。だからはい、これで帰ろうね」

「カヨちゃんどうしたの? 急にリッチになっちゃったの?」


ことりちゃんが驚きながら元々大きな瞳をさらに1.5倍まで広げた。私の行動がどう考えてもおかしいと感じていることりちゃんは、私の背後に立つケンに視線を送ってる。


「うん、実は今月リッチなの。タクシーで家までって、千円で足りるかなぁ?」


私は再び財布のお札入れを確認した。もしこれで足りないのなら、お金を下ろさないともうないや。