「まずはそのおっさんを見つけ出すのが先だな」

「見つけ出すって?」


逃げるの間違いじゃなくって?

私は思わず耳を疑った。むしろ私はあの人から逃げることしか考えてなかったんだけど。


「見つけてどうするの? それって危険すぎない? あの人何するかわかんないし、それに私はあの人に殺されたんだから」


厳密に言えば、一度は殺されかけたんだけど。うん、2度目の時もあの人は私を殺そうとしてた。あの時もきっと、トラックで轢かれるのを狙ったんだと思う。


「だからだろ、だからあのおっさんの居場所を突き止めておくのが先決だって言ってんだ。相手の行動を知っておかないと防げるものも防げなくなる」

「でも見つけるなんてできるの?」

「お前言ってたろ、柊が事故る直前まであいつに跡をつけられてたって。学校出たところから駅まで。それが事実だとすれば、あのおっさんの方がこっちを探してるはずだろ。だから俺らはその裏を突く」


……なるほど。今私達がしようとしているように、あの人も私を探して後をつけてきてた訳だから、相手の方から私を見つけに来るのか。

私は思わず辺りを見渡した。実は朝からずっとつけられているのかもしれない。それらしい人影は店内で見当たらないけど……そこまで考えたところで私は思わず身震いをした。